脛こすり(すねこすり)

もののけ図録

 愛らしい見た目で人気の妖怪「すねこすり」は岡山県に伝わる妖怪です。犬のような見た目で夜道を歩く人の足元にまとわりつき転倒させるイタズラ好きの妖怪です。同地域には猫のような見た目の人を転倒させる妖怪も伝承されており、同じ妖怪ではないかと解釈されています。

 現代のように照明が夜道を照らしていた時代とはことなり、昔は街灯もなく手持ちの明かりも提灯や行燈、松明などが一般的で、明かりが照らせる範囲も小さく夜道は不気味なものでした。また、アスファルトで舗装された道路とちがい、地方の街道は砂利道や地道で雨が降るとぬかるみ、凹凸に足を取られるようなことも多く危険なため、夜に出歩くことも憚れていたようです。すねこすりはそんな夜道に対する恐怖心が生み出した妖怪と言えるでしょう。

文献による伝承など

 すねこすりはその知名度に対して文献がほとんど存在せず、昭和10年に岡山県の佐藤晴明先生が発行した『現行全国妖怪辞典』に記載が見られるのみです。のちに柳田國男先生が『妖怪談義』にて取り上げ、水木しげる先生によりビジュアルを付与されることで全国的に有名な妖怪となりました。

脛コスリ 犬の形をして雨の降る晩に通行人の股間をこすって通る。岡山県小田郡(二)

メディア作品に見るすねこすり

 水木しげる先生によるビジュアルが人気をよび妖怪の世界でメジャーになったすねこすりはさまざまなメディアにも登場しています。2005年に神木隆之介さん主演で公開された映画「妖怪大戦争」では物語のメインに関わる活躍を見せました。また、水木しげる先生の出身地鳥取県境港市の水木しげるロードにも、可愛らしいすねこすりのブロンズ像が設置されています。2018年に放送されたアニメ「ゲゲゲの鬼太郎」の第6話「厄運のすねこすり」では、従来のすねこすりのデザインに「人の生気を吸い取る」という猫又のような性質が付与されていました。今後どのような形で活躍するかまだまだ期待が高まる人気妖怪ですね。

図録データ

力:1 人を転倒させることができるがそれほど強くない

知能:1 人語を解し会話を行う記録はありません

大きさ:1 犬や猫に見間違えられることから小動物程度

危険度:1 夜道で転倒させられるが大きな怪我につながるほどではない

特殊能力:2 夜道という限られた場所ではありますが人間をころばせる特殊能力を有します

遭遇率:特に珍しい妖怪というわけでなく夜道でしばしば遭遇します

出現地域:記録が残っているのは岡山県のみですが、和歌山県における類似の妖怪や「のぶすま」や「塗り壁」、「送り狼」など道に出現する同種の妖怪は日本全国に広く分布しています。

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